ヒレナガカサゴとかいう魚がめちゃくちゃ硬くて美味しい

2024/10/09
 
この記事を書いている人 - WRITER -

最近、先輩の紹介で知り合った方から魚の提供を受けているのが、その魚がまた珍しい魚ばかり。

 

 

第一回はあのヤマヒメ、第二回となる今回はヒレナガカサゴを送っていただいた。どちらもカサゴ亜目に属する珍魚で通常に生活していたらお目にかかることすら難しい。

 

 

当然、ヒレナガカサゴは標本にするつもりだったが、前半部の背鰭棘の数や形、鰭膜の繋がりが異常であることを発見。迷いに迷ったものの、奇形個体であったことに加え、前々から味が気になっていたので食べることにした。(アイキャッチ画像:kazukingさん)

 

 

 

 

背鰭が長いヒレナガカサゴ


ヒレナガカサゴ、よく見ると所々が黒い

 

 

ヒレナガカサゴはヒレナガカサゴ科に属する魚で、名前の通り背鰭棘が長いことが特徴。この長い背鰭棘には毒があると言われている。

 

 

本種は○○カサゴと名乗るだけあってカサゴ亜目に属する魚で、よく似たフサカサゴ科やメバル科とは背鰭の棘が多いことなどの特徴により区別することが可能だ。

 

 

また、ヒレナガカサゴはやや深場に生息する中型種で、釣りでの漁獲が多く見られる。今回の個体もオフショアジギングで得られたもので、上顎にはしっかりフックの跡が残っていた。

 

 

オガサワラカサゴという魚もいる

 

 


父島産のオガサワラカサゴ

 

 

日本産ヒレナガカサゴ科の魚類は本種の他にオガサワラカサゴが知られている。釣りによる漁業が盛んな小笠原諸島ではたびたびオガサワラカサゴが釣獲されているものの食用にはならない。オガサワラカサゴを食べたことがある漁師さん曰く、「肉が硬い」とのことだ。

 

 

ちななみに、ヒレナガカサゴとオガサワラカサゴはよく似るが、鱗の数、眼と涙骨の間の棘の有無により区別することができる。かつて、オガサワラカサゴは小笠原諸島のみに分布すると考えられていたため、採集地のみで超簡易同定が可能だったが、近年、オガサワラカサゴと思われる個体が別の海域でも見つかっており、分布域のみでの識別はより説得力がなくなってしまった。

 

 

 

 

ヒレナガカサゴはとにかく硬くて美味しい

本種は見るからに美味しそうな見た目をした魚だが、実際に食べたことがある人が少ないように感じる。もちろん、漁獲そのものが少ないということもあるのだろうが、この魚についての食味については謎が多い。

 

 

近縁種であるオガサワラカサゴは「肉が硬い」とのことだが、ヒナガガカサゴはどうだろうか?味について知見の少ない魚を食べるのはいつも興奮する。

 

 

内臓は右から肝臓、胃袋、浮袋、卵巣

 

 

早速、慣れた手つきでヒレナガカサゴを捌いていく。鱗は小さくやや剥がれにくいが、ペットボトルのキャップでガリガリすれば容易に剥がすことができた。

 

 

三枚おろしにする際に驚いたのがヒレナガカサゴの皮の硬さである。大きな魚は当然、皮膚も分厚くなる為、皮が硬くなる。ヒレナガカサゴそれとは異なり、魚体の大きさの割に皮が非常に硬いのである。

 

 


不思議な感触の肉

 

 

それとは正反対に筋肉は比較的柔らかく包丁でサクサクと切れていく。なんとも不思議な肉質である。身に透明感がなく白く濁っているが、脂が乗っている感じではなさそうだ。まだ出会ったことのない魚の肉質に自然と期待が高まる。

 

 

刺身

 

 

まず、刺身で食べることにした。今までカサゴ類を幾度となく食べてきたが、軒並み味が良い。唯一、肉に旨みがなかったシロカサゴでも皮と肝は絶品であった。

 

 

一方は皮を引き、もう一方は皮を湯引きにしていただく。皮自体は固いものの、筋肉から剥がすことは容易である。はじめに皮を引いた方をいただく。噛んだ途端驚いたが、とにかく硬い。触ると柔らかいのだが、噛もうとすると硬いのである。この食感は僕のデータにないので例えようがないが、強いて言えばグミのようなものである。肝心の味だがカサゴの仲間にしては味が薄い。

 

 

続いて皮を湯引きにした方を食べてみる。案の定、皮が硬く口の中でゴリゴリと音を立てる。しかし、皮目には旨みがあり、先ほどの皮無しと比較的すると断然旨い。そもそも、自分は貝や乾物など硬い食べ物が大好物なので、硬いヒレナガカサゴの皮が美味しくて堪らない。確かに旨みこそ少ないが食感が強いだけで十分に満足できてしまう。

 

 

 

 

ムニエル

 

 

ここからは加熱料理の部に入る。カサゴといえば唐揚げだろと思うが、諸事情でムニエルと煮付けでいただくことにした。

 

 

早速、切り身をフライパンで加熱したのだが、その瞬間に皮が激しく収縮。このまま皮が柔らかくなるまで焼いてやろうと思ったが、一向に柔らかくなる気配を感じない。

 

 

最終的には焦げるのを恐れて適度に焼いたものを完成とした。味に関しては刺身の時と同様に旨みが強いほうではない。皮は依然として硬くてゴワゴワ。これは身も同じでこちらはむしろブリンとしている。ゴワゴワとブリン、この類の硬さが好きな人にはたまらないだろう。

 

 

煮付け

 

 

煮付けも概ね同じ食感であった。身に煮汁が染み込む感じではなかった為、濃い味で煮付けてみた。煮汁との相性がよく、ゴワゴワとした皮とブリンとした身のおかげで長時間味を楽しむことができる。言うなれば魚の煮付けグミのようなもの。個人的にはムニエルよりも煮付けのほうがヒレナガカサゴに合う気がした。

 

 

味噌汁

 

 

最後は締めで汁物を作る。具材は3枚おろしの時に出たあら、そして内臓である。これに味噌を溶いて味噌汁とした。炊いてる時から良い匂いがして、ヒレナガカサゴは汁物が向いてるのではないかと確証を得る。

 

 

 

 

予想通り、汁に良い出汁が出ており、肝からでた脂も程よく美味しい。胃袋も弾力があり非常に旨い。浮袋は加熱するとトロッとする魚が多いが、本種の浮袋は比較的食感がある。肝も旨味が出ており結構美味しい。

 

 

ヒレナガカサゴとかいう魚、劇的に美味しいという訳ではないが、我々のような硬いもの好きには堪らない食味であった。揚げ物にした場合の食感は未知なので、次は唐揚げにして食べたい。もし、油で揚げても硬いままなら最高だね。

 

 


 

 

なんとなく父島の漁師さんが言っていた「肉が硬い」の意味が分かった気がした。恐らくオガサワラカサゴも似たような食味なのだろう。もしかすると、この食味はヒレナガカサゴ科に共通しているのかもしれないので、次はオガサワラカサゴを食べて検証したいと思う。もちろん、ヒレナガカサゴの味も今回の一個体のみで評価することは難しいので、引き続きヒレナガカサゴも集めていきたい。

 

 

 



- Comments -

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

Copyright© フィッシュズカン , 2024 All Rights Reserved.