浜で拾ったセンハダカを食べる

2024/03/29
 
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年明け前の12/30の未明、僕とM氏はとある浜を歩いていた。もちろんお目当てはこの時期に打ち上がる深海魚たち。運が悪いと坊主なんてことも少なくない採集方法だが、海に恵まれれば日常生活でお目にかかれない深海生物に出会うことができる。

 

 

早速、浜をライトで照らすとギラギラと反射する物体が見えるが大抵はビニールの裏側かボラである。この反射が深海魚であることもしばしばあるが確率は低い。M氏はこの反射を見つけるプロであり僅かな光も逃さない。過去には20mm程度の極小さなハダカイワシを肉眼で発見している猛者だ。

 

 

この日、深夜にもかかわらずM氏の眼は冴えており、開始から僅か数分でセンハダカを見つけてしまう。深海魚よりギラついた眼は次々とセンハダカを発見していく。

 

 

流石M氏と思っていたら自分のそばにもセンハダカがあるではないか!

 

 

センハダカは一箇所にたくさんというよりかは浜辺に散在しており、センハダカを拾って数歩歩けばまたセンハダカがあると言った感じであった。センハダカという魚自体、珍しくないが大量に打ちあがることは非常に稀。年が明ける前に大型の幸運を呼び寄せてしまったのかもしれないと二人ともテンションが上がる。

 

 


1匹だけまだ生きてたよ

 

 

その一方、他の生物は皆無と言っていい程であり、比較的よく打ち上るヒロハダカですら1匹も見られなかった。唯一、見つかったのがキュウリエソが2個体のみ。よってこの日の収穫は大量のセンハダカのみということになった。

 

 

M氏はセンハダカを幾度となく見てきているので、採集した大分部を僕に分けてくれるようだ。僕も今までセンハダカを数個体標本にしているが、ここまで状態の良い標本は貴重である。そのため1個体は標本とさせていただき、残りの個体は色々料理して食ってみることにした。

 

 

 

 

センハダカがたくさんあると嬉しい


ここまで綺麗なのは珍しい。剝がれやすい鱗もほとんど残っている。

 

 

40分程度の採集を終えて帰宅するや否や成果を確認する。数を数えてみるとなんと35匹もいた。当時、無我夢中で気づかなかったがかなりの量を拾っていたみたいだ。M氏が少量持ち帰った分も合わせると軽く40匹は超えているだろう。

 

 

さらに、驚くべきことに全ての個体において胸部にカイアシ類が寄生していた。ハダカイワシ科の魚はこの手の寄生虫がよく付いているのだが、宿主によってカイアシ類の種も異なるのか若干色彩や大きさが異なる。寄生虫は門外漢なのでサッパリだが、何種類かはいる気がしている。

 

 

また寄生する位置も異なり、これまで見てきたセンハダカはいずれも胸部に寄生されるのに対して、ヒロハダカは体側部に寄生されている点も興味深い。

 

 

センハダカはよく見られるハダカイワシ

センハダカはハダカイワシ科ハダカイワシ属に属する小型種で、沿岸に出現するハダカイワシ科の中ではよく見られる。

 

 

他のハダカイワシ属と比較すると全体的に黒っぽいのが特徴で、特に生鮮時は青みかがることも。この色彩に加えてVnがよく発達することから本種はハダカイワシ科の中では同定がしやすい種でもある。

 

 

また、本種は他のハダカイワシ科魚類同様に日周鉛直移動をすることが知られており、昼夜は深海に住むが夜間になると浅海へ浮上し、今回のようにごく浅い場所にも出現する。

 

 


鮮度の良いセンハダカ。光の当て方によって眼が青い色に見える

 

 

センハダカは様々な漁で漁獲される魚でもある。実際、僕は今まで定置網、底引網、サクラエビ漁での採集を確認している。今回は打ち上がった個体であったが、かつて港内を活発に泳ぐ姿も目撃した。

 

 


底引き網で漁獲されたセンハダカ。これはこれでかっこいい。

 

 

余談の余談だが、サクラエビの街で知られる静岡県の由比ではサクラエビ漁で大量に混獲されるセンハダカを食用としている。飲食店でかき揚げで提供されているらしく、見るからにうまそうなのでいつか食べに行きたいと思っている。

 

 

 

 

センハダカの食べ方

さて、いよいよセンハダカを食べていく。ハダカイワシは幾度となく食べてきているが、本種を食べるのは初めてなので緊張が走る。

 

 

このような小魚は油で揚げてしまえば良いのだけど、砂浜で拾ったセンハダカは少々面倒なのである。というのも大きく開く鰓腔と口腔に大量の砂が入っていることがあり、よく洗わずに食べてしまうとかなりジャリジャリする。したがって、洗浄または頭部を切り落とす等の下処理が必要なのだ。

 

 

刺身


もちろん発光器も食べられる

 

 

打ち上がり個体とはいえ数時間前に拾ったばかりだし、眼と鰓、体の張りを見る限りかなりの良鮮度。これを刺身で食べない選択肢はない。早速、鱗をとるが強めの流水で最も簡単に剥がれてしまう。これがハダカイワシと言われる所以だ。ハダカイワシ科の中にはアラハダカのように強い櫛鱗を持つ者もいるがそれらは少数派であり、ほとんどの種は簡単に鱗が剥がれてしまう。

 

 

鱗をとってしまえばあとは好きに食べることが可能だ。皮なんて剥く必要ないし発光器だってそのままいただける。贅沢に刺身を数枚かき集めて醤油をつけていただく。身は柔らかくハダカイワシ特有の旨みも感じられる。わずかではあるが脂も感じられ非常に旨い。小さいことが残念であるが今回のように大量に手に入れば刺身で食べるのも悪くはなさそうだ。

 

 

塩焼き


銀色の魚はキュウリエソ

 

 

続いては塩焼きにして食べる。そのまま焼くとフライパンにくっついてしまうので軽く油を引いて焼いていく。ちなみに下処理が面倒なので頭をつけたまま焼いてしまった。骨が柔らかいので中骨も頭部も丸ごと食べることができる。

 

 

 

 

しかし、案の定処理の甘さが仇をなし、砂がジャリジャリ。これも捉え方によっては良いアクセントなのかもしれないがはやり次はちゃんと下処理をしようと決意した。味に関しては流石センハダカと言うべきかかなり美味しい。大きさが小さいのが残念であるが、まとめて食べればそれなりに食べ応えがある。

 

 

唐揚げ


結局これが一番旨い

 

 

塩焼きでの反省を生かして下処理したのを唐揚げにした。カリカリに揚げたセンハダカは小さいながら香ばしく食欲をそそる。味に関してもちゃんとセンハダカの味がするし身は柔らか、もちろん骨も気にならない。かき揚げで提供されてるだけあって揚げ物が合うのかもしれない。

 

 


 

センハダカは小さいながら美味しかった。今のところハダカイワシ科の魚は数種食べてきているが今のところははずれなし。そして、最近打ち上ってる魚を食べることに抵抗がなくなってきた気がする。

 

 

 



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