北の普通種ギスカジカを食べる

2023/10/13
 
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先日、青森在住の釣り人からギスカジカなる魚をいただきました。この魚は北方で釣り人をしてる者であれば知らぬ人はいない程のド普通種なのですが、流通しているのは産地に限られているため全国的に見ればある意味で珍しい魚です。実際、私の住む神奈川県ではトゲカジカニジカジカ、稀にケムシカジカ(またの名をトウベツカジカ、こちらはケムシカジカ科の魚)が売られていることはありますが、ギスカジカをお目にかかる機会はほぼない。というか少なくとも私はまだ一回も見たことがない。もしかすると、もう出会えないかもしれないのでじっくり観察・撮影してから食べていきましょう。

 

 

 

 

ギスカジカとは

 

 

ギスカジカはカジカ科に属する魚。体長が45cm以上になる種であり、小型種の多いカジカ科の中では大型種の部類にはいります。本種は浅海からやや深場の藻場や岩礁に生息する普通種で北方ではよく見られるカジカの1種です。産地の一つである北海道では別名で”イソカジカ”とも呼ばれると『北海道の魚図鑑』に書かれているが、北海道在住の祖父曰く、単にカジカと呼んだり、略してギスと呼ばれることが多いという。ちなみに、釣り人の中にはギスカジカを釣ってもリリースしてしまう人も多いという。なんでだろう不味いのかな?

 

 

カジカ科の魅力の一つとして大きさの割に値段が安価であることがあげられます。主に食用として流通するカジカ科はどれも安く、オタクの財布にも優しい種がほとんどです。食用カジカといえば、あの”なべこわし”で知られるトゲカジカでさえ神奈川ではワンコイン程度。他の地域での値段は不明だが少なくとも手が出せない魚ではない。その反面、頭がでかくて歩留まりが悪いため、目方の割に採れる肉が少ないのも特徴。なるべく体全体を楽しめる料理にした方が捨てる部分がなくてよいかもしれません。

 

 

カジカ科の同定

 

 

今回貰ったギスカジカはこれ。大きさは全長で40cm程度で上から見ても分かるようにまるまると太った個体です。これは後で捌いて分かったことなんですが、まるまるとしているのは子持ちだったためです。普段、キヌカジカやイダテンカジカなどの小型種ばかり見ている私からすれば十分な大きさですが、北海道の魚図鑑には体長45cm以上になると書かれていることから、これよりも大きくなる模様。

 

 

 

 

カジカ科は見慣れてないので今のうちに軽く同定しておきます。使うのはもしろん魚類検索。今のところカジカ科に関しては魚類検索のみで大丈夫でしょう。たぶん。カジカ科の同定には鰭条数や頭部の棘を見る必要がありますが、この大きさからギスカジカ属の魚でしょう。問題は日本産ギスカジカ属4種の識別です。

 

 

まず、頭部背面に2対の皮弁があることからトゲカジカ及びオクカジカと区別することができますが、頭部背面の皮弁は頭の大きさに対して小さいのであまり目立ちません。さらに皮弁は柔軟な構造の為、体に張り付いて観察が難しいことも多いです。こういった場合には水中で観察すると皮弁の数や分枝、形状がよく分かります。特にカジカ科の同定において皮弁は重要な形質となるので覚えておくとよいかもしれません。

 

 

 

 

ギスカジカによく似たシモフリカジカとは眼隔域が広いことと腹面の斑紋が中央部に及ぶことから区別することができます。今回の個体はかなりきわどいですが、総合的にみてギスカジカとしてよさそうです。間違えていたらこっそり教えてください。

 

 


たくさんいるね

 

 

鰓蓋をめくると大きな鱗のようなものがたくさんついていました。おお、これはラッキーと思って一つまみだけ食べてしまったのですが、後で調べたら魚に寄生するウオジラミという甲殻類らしいです。今のところ体に異常はないので無害な生物と思われますが、念のため食べない方がよいでしょう。ちなみに味は海ブドウっぽかったです。

 

 

 

 

ウオジラミと体表のぬめりを落とします。今回はカジカ鍋にする予定なので臭みの原因になるぬめりはしっかり落とします。熱湯をかけた後、包丁や指で入念に落とします。今回は捌く前にした処理をしましたが、これだと鰓腔内の汚れが落としきれないのでアンコウみたいにばらしてからやるほうがよさそう。

 

 


カニ食ってる魚は大体旨い

 

 

お腹を開けたら蟹と貝、大量の卵がでてきました。北海道では時期になるとカジカの卵を”カジカっ子”と呼びスーパーにも並ぶという。ただし、それがギスカジカの卵巣がどうかは不明ですね。スーパーに出てるのはトゲカジカかもしれません。鮮度がやや心配ではあるが美味しそうなので醤油漬けで食べようかと思います。あと写真はないけど肝がオレンジ色で綺麗でした。

 

 

 

 

ギスカジカ料理

 

 

やはりカジカのすべてを楽しむならば鍋料理。肝臓、胃袋、肉、鰭、頭部をふんだんに使って炊いたもの。頭部から良い出汁が出ていてつゆが非常に旨い。正直、肉に味はあまりないが触感が良く、皮がプルプルしていてなかなか美味しい。胸鰭もコラーゲンがたっぷりで好きな人は好きな味。これは唐揚げなんかにしても絶対に美味しいやつです。

 

卵の醤油漬け

 

次は魚卵です。ギスカジカの卵を湯がいて冷蔵庫で2日醤油漬けにしたもの。どうも様子が気になり二日間我慢するの大変でした。大きさは小さめですがプチプチとして濃厚な味わいがあります。若干、塩味が強いですが白米と一緒に食べるとちょうどいい感じ。これだけ大量の卵ですからいくら白米かけてもなくなりません。正直、魚卵あまり好きでないですが、思いの外美味しく白米二人前食べてしまいました。

 

 


是非食べてみてくださいと言いたいところだが、市場に流通しないので何とも言えないところ。東北や北海道に釣りをする知人がいる人は頼んでみても良いかもしれません。もしも、魚屋で見つけたら買うべき魚です。とろこで、子持ちかどうかでカジカの価値って変わったりするのかな?

 

 

ギスカジカ

 

 

 



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