黄金のフグ「ウチワフグ」を食べる

2021/06/02
 
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フグ目にはフグ科の他にベニカワムキ科やハコフグ科、モンガラカワハギ科など変わった形した魚が多くいるが、ウチワフグはそれらに負けず劣らず奇妙な見た目をしている。

 

 

その奇妙な見た目からフォルムだけ知っているという人も多く、魚愛好家からしたら喉から手が出る程欲しい魚だ。

 

 

今回、そんなウチワフグを運よく漁師さんからいただく事ができた。標本として保存するのもよさそうだが、味も気になるので食べてみた。

 

 

 

 

1科1属の唯一無二

ウチワフグ(Triodon macropterus)はフグといっても、高級魚であるトラフグやクサフグなどが属するフグ科とは異なるグループに属する。本種はウチワフグ科ウチワフグ属に属する海水魚で、歯の形状などからフグ科の魚類とは明瞭に区別される。

 

 

ウチワフグ科の魚類はウチワフグ属の本種が1種知られているのみで、まさに唯一無二な存在である。

 

 

また、生態も独特でフグ目魚類では珍しく本種は50〜300mの深場に生息する。

 

 

 

今回の個体は小笠原諸島の底釣りで混獲されたものだ。底釣りとはハマダイなどを狙った釣り漁で主に水深200m以深を漁場とする。本種は捕獲例が稀なことから稀種とされているが、小笠原諸島の底釣りではよく見られる。

 

 

また、漁師さんの話によると本種は独特な匂いを発し水面付近まで来ると分かるという。しかし、まな板の上の本種からはそういった匂いはせずむしろ匂いは弱いくらいだ。推測だが匂いが確認されたのが漁獲時ということから、ひょっとすると危険を察知したウチワフグの防衛機能かもしれない。

 

 

形態も特徴的である。体色は一様に黄色く上顎は下顎よりも突出し、臀鰭と背鰭が体の後方に1基ずつあり尾鰭は二叉する。尾鰭が二叉するフグ目魚類は珍しく、私が把握している中ではギマ科の魚類と本種くらいだ。

 

 

体は鰭を除き小棘(鱗)に覆われる。この小棘は他のフグ目とは違いよく目立ち、ソコダラ科のトウジンを彷彿させる。

 

 

 

本種の最大の特徴は標準和名の由来にもなっている腹部膜状部である。本種を特徴づける形質の一つで白く縁どられた黒班や弧状の白斑がある。黒班の形には個体差があり、小さいものや形が歪な個体もいる。この構造は広げたり折り畳むことができるが通常は折り畳んだ状態である。

 

 

また、腹部膜状部は臀鰭の直前に切れ目を持つが何の役割をしているのかは不明である。

 

 

 

 

捌いてみる

 

前置きが長くなってしまったが、いよいよ捌いていく。

 

 

ウチワフグは皮が非常に分厚く硬いため、捌くためにはあらかじめ皮を剥いとく必要がある。

 

 

まず、腹部膜状部後方にある切れ目から喉部付近までハサミを入れる。喉部には太い骨が腹部膜状部の前縁に沿って伸びているので、この骨を避けるように下顎下面までハサミを入れる。

 

 

最後に背鰭と臀鰭、必要に応じて尾鰭を切り落としたら皮をむく下準備は完了だ。

 

 

 

 

皮を剥き内臓を取るとこのような感じになる。こうして見ると頭部こそ大きいものの思いの外、可食部が多いことが分かる。

 

 

皮の剥き方に関しては基本的に頭から尾鰭の方向に皮を引っ張れば、簡単に向けてしまうので特にコツはない。ただし前述した通り本種の体表は小棘で被われていることに加え、皮を剝がすのに力が必要なので、手を怪我しないように気を付けたほうが良いだろう。

 

 

また、ネットでは肝臓は食べても問題がないという情報があるが、海域や個体、時期によっては毒を持っている可能性があるので豪快に廃棄した。公の採集例が少ないためか、研究が進んでない種でもあるのでどうしても慎重になってしまう。

 

 

 

頭を落として喉元の骨を手で引き千切れば後は、普通に3枚下ろしするのみ。特殊な骨格はないので普通の捌き方で問題ない。

 

 

身は濁った白色で弾力があり特に匂いはない。

 

 

 

両顎歯は上顎歯が1対2枚で下顎歯が1枚のみの、合計3枚の歯で構成される。本種の学名は Triodon macropterus だが、属名の Triodon は歯の構造にちなみ Tri(3つの)+ odon(歯)と命名されている。また、英名も歯の構造にちなんだ Threetooth puffer(3枚歯のフグ) という名が当てられている。

 

 

 

 

和名の「ウチワフグ」は腹部膜状部に注目した名だが、学名と英名は何故そこに注目したのか歯にちなんだ名前になっている。どちらも本種の特徴を端的に表した名前であるが、国によって注目する場所が違うのは面白い。もし、命名者が黒斑に注目していたら違った名前になっていただろう。

 

 

まずは刺身で食べる

 

まずはフグ料理の定番、刺身(てっさ)でいただく。身に弾力があるのでなるべく薄く切るのがポイントだ。

 

 

味も食感も他のフグと似ており、ウツボのような酸味の一歩手前の風味もある。しかし、旨味は乏しく同じく小笠原諸島の深海で漁獲される魚と比べてしまうと見劣りしてしまう。

 

 

 

喉付近と頬の肉は唐揚げにした。塩コショウを振って揚げただけのシンプルな料理だが、刺身より旨味が感じられ個人的にはかなり好みだ。身の弾力性も顕然で普通に美味しい。

 

 


 

 

深海漁が行われている離島では本種の漁獲はそれなりにあるように思える。味は絶品という訳ではないが、もし見かけた際には食べてみるとよいかもしれない。

 

 

 
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