ツノダシを食べる

2024/06/04
 
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最近、仲良くさせていただいてる採集家の方から相模湾産ツノダシを2個体もいただいた。僕は泳げないので魚の採集はもっぱら釣り、市場、漁船に限られている。それ故に、釣りや市場採集では入手し辛い魚(ツノダシなんてまさにその例)を供給してくださる採集家の協力は大変有難い。

 

 

ツノダシ自体、相模湾に普通に生息しているが、見つけたところで釣れるとは限らない。少なくとも僕は釣ったことがないし、周りでも釣ったという者はいない。他にも漁業で採捕される可能性もあるが、入網する確率が低いことに加えてこの手の魚はスレで状態が悪くなりそうである。

 

 

しかし、潜り採集であってもツノダシを採集するのは困難らしく、ベテランでも苦戦することがあるようだ。というのも、ツノダシは泳ぎは速く、近くに岩礁があるとそちらへ逃げられてしまうらしい。

 

 

そんなこんなで貴重なツノダシを2個体いただいた訳である。1個体は標本にするとしてもう一個体はどうしよう悩んだ結果、食べてみることにした。事前に調べて拝見したネット上の評価は2つに割れているので食味を確かめたいと思う。

 

 

 

 

意外と身近にいるツノダシ

ツノダシはスズキ目ツノダシ科の海水魚で、某アニメ映画だとギルさんというキャラでお馴染みだ。独特な体型と色彩パターンもさることながら、突出した吻部や非常に長い背鰭第3棘もかなり特徴的である。

 

 


2個体とも状態が良好だったがより綺麗な個体を標本にした

 

 

色彩と体型はチョウチョウウオ科のハタタテダイ属に酷似するが、ツノダシ科という全く別のグループに属する。しかも、このツノダシとかいう魚、こんな見た目でニザダイ科に近いという変わり者。

 

 

さらに、ツノダシ科の魚はツノダシ属ツノダシの1属1種のみが知られている小さなグループ。名前も姿もメジャーな割に、調べると結構変態な一面もあるのだ。ツノダシはインド・太平洋に広く分布し、国内では千葉県以南の浅い岩礁域で普通に見られる他、2000年には青森県八戸市の定置網からも記録されている(改訂青森県産魚類目録)。

 

 


宮之浜のツノダシ、波打ち際にいることもある

 

 

このツノダシが食用として漁業の対象になることはなく、専門で釣る人も恐らくはいない(食用で流通してたら教えてください)。ツノダシは主に飼育用で流通し、国内外から生体の供給がある。

 

 

 

 

ちなみに「ツノダシ 値段」と検索をかけたら、価格は約2,000~4,500円くらいで売られていた。価格は産地や大きさで値段が変わる他、鰭欠けがあるのは安いようである。そういえば、昔見たツノダシも背鰭の伸長部が欠けていたが、ここは欠損しやすい部位のようだ。

 

 


相模湾で獲れたムレハタタテダイ

 

 

ついこの前までツノダシの和名の由来を「ツノみたいに伸びた背鰭」と勝手に思ってたが、どうやら眼隔部にある1対のツノが由来だという。今回の個体は眼隔部のツノが不顕著であったが、魚類検索によるとツノは未成魚ではないらしい。

 

 

ちなみに、ツノダシって英名ってなんだろうと思い何気なくFish baseを見たら”Moorish idol”と判明。面白い英名だなあと感心はしたものの、由来は詳しくは調べてはないので不明である。

 

 

ただ、これ関係で面白い英名の魚をもう1種発見した。False moorish idolというのだけど、この魚の標準和名はムレハタタテダイ。Falseは”偽の”や”間違った”という意味なので、偽のツノダシという意味だと思う。同じくFalseが付く魚にはアクタウオ(False trevally)がいる。話が大分逸れてしまったけどいよいよツノダシを食っていく。

 

 

ツノダシの食べ方

ツノダシは普通の魚のような鱗ではないため、鱗は落とす必要はない。体表は触るとザラザラとしており、ニザダイを彷彿とさせる感触だ。見た目は全然似ていないけど、触り心地でニザダイを感じさせてくれる。反対にハタタテダイとは色彩こそ似ているものの、鱗の感じは全くの別物であることから全く別のグループなんだなと思わせる。

 

 

さらに、現物を初めて観察して気づいたんだが、口も結構面白くて歯がかなり発達していて特徴的である。この歯でなに食べてるのかなと調べたら藻類を食ってるらしい。それはなかなか釣れないわけだ。

 

 

 

 

皮が硬くて包丁の刃が通りづらそうである、こういうのは三枚におろす前に皮を剥くのがよいと教わったのでその通りにしようと思う。前方に切れ目を入れ尾に向けて皮を剥けば案外簡単に向けてくれる。身はこんな感じで皮剥いても薄っらと模様が残っているのが可愛らしい。ニザダイのように弾力のある身は指でつまんでもそう簡単には崩れない。

 

 

 

 

刺身

 

 

一時間くらい前まで生きていたのでもちろん刺身でいただく。独特な香りはあるが、ネットの評価で見るような臭さはあまり感じられない。小さいながら旨味もそこそこあるし結構美味しい。分類的にはニザダイに近いそうだけど味は全く異なる。

 

塩焼き

 

 

続いては半身を塩焼きにしていただく。焼くので皮はそのまま残しました。焼くとさっき感じなかった香りが少しわかってくる。ただ、決して嫌な臭いではなく、あくまでも正統派の魚の匂い。これを手で毟りながら皮ごと食べる。皮はやや分厚いので口の中でも少しもしゃもしゃするが、そこまで気にならない。

 

 

体の身が薄いので食べ応えはないが、しっかりと旨味があってなかなか美味しい。胸の筋肉は結構発達していて風味も体の肉と少し異なる。こっちはそこそこ食べ応えもあって美味しい。カリカリに焼けた背鰭と臀鰭ももちろんいただく。

 

 


 

結論、ツノダシ美味しい魚でした。しかし身が薄いので小型個体では食べるところがほとんどないのが残念である。丸揚げとかにしたら意外と美味しいかもしれない。

 

 

 



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