ツバメコノシロがめっちゃ美味しい

ツバメコノシロという魚をご存知ですか?見た目は地味でマイナーな存在ですが、実はこの魚は非常に美味しいのです。日本ではあまり知られていませんが、東南アジアでは重要な食用魚として親しまれています。今回は、そんなツバメコノシロについて、その生態や食べ方、美味しいレシピなどをご紹介したいと思います。
ツバメコノシロとは
ツバメコノシロは水深122メートル以浅の沿岸の砂泥底や河口に生息する魚です。日本ではツバメコノシロ、ミナミコノシロ、カタグロアゴナシ、ナンヨウアゴナシの4種が生息しており、おそらく本種はツバメコノシロ科の中でもよく見られる種でしょう。顔つきや体色はボラに似ていたり、標準和名に「コノシロ」が付きますが、本種はそれら2種とは別グループのスズキ目に属する魚なので注意が必要です。

ツバメコノシロ科は南方で多く見られるグループでインド太平洋に広く分布し、東南アジアでは重要な食用魚として利用されています。日本では広く知られていませんが、福島県以南の太平洋や若狭湾以南の日本海に幅広く生息しています。
ツバメコノシロの特徴
今回、シラス漁師の方から鮮度抜群のツバメコノシロをいただきました。ツバメコノシロはユニークな特徴をたくさん持つ魚であり、まずはその姿をじっくりと観察した後に美味しくいただくことにしました。
まず、ツバメコノシロのユニークな特徴といえば、胸鰭の遊離軟条でしょう。この遊離軟条は、濁った水に生息するツバメコノシロが視覚代わりに使うと考えられています。同じく胸鰭に遊離軟条を複数持つ魚ではホウボウ科の魚たちが有名ですが、ツバメコノシロの遊離軟条は、ホウボウのそれよりも細く、柔軟性に富んでいるのが特徴です。ホウボウ科の胸鰭の遊離軟条には味蕾があり、これで歩行や索餌を行うのに対して、ツバメコノシロ科の魚は遊離軟条を物体を感知するのに使うことが知られています。
ツバメコノシロ科の分類において、胸鰭の遊離軟条は欠かせない形質であり、本数や長さで種を同定することができます。日本産ツバメコノシロ科は胸鰭に4、5、6本の遊離軟条を持つ種が知られており、本種は遊離軟条が5本であることから、日本産の他のツバメコノシロ科の魚と容易に区別することができます。なお、日本産のツバメコノシロ科は、胸鰭遊離軟条が短い種しかいないのに対し、外国種には胸鰭遊離軟条の長さが体長を越える種も存在します。特に、胸鰭遊離軟条が長い種は視覚よりも触覚に頼っているとされています。胸鰭の遊離軟条は、ツバメコノシロ科の魚の中でも非常に重要な役割を果たしていることが分かりますね。
もう一つの特徴は、魚の目を覆う厚みのある透明な膜状の構造である発達した「脂瞼(しけん)」です。このような形質を持つ魚は、他にもボラ科やアジ科の魚が知られていますが、未だ詳しい役割は不明です。一説では、眼を保護する役割があるとされています。確かに、ツバメコノシロのように濁った水に生息する魚が獲得した形質ですから、納得がいきます。
ツバメコノシロを食べる
ツバメコノシロは見た目から身が緩そうな印象を受けますが、触ってみると結構しっかりとした筋肉を持っています。漁獲から一日たちますが、鮮度も非常に良好です。
鱗はやや小さく、厚みがあるものの、剥がれやすく、指でも簡単にはがせるのが特徴です。また、鰭にも鱗が存在するため注意深く取り除くことが必要です。包丁を使って削ぎ落とすこともできますが、指先で丁寧に剥がしても十分な仕上がりになります。
三枚におろすと、こんな感じになります。この魚の骨格は複雑ではなく、体が幅広いため非常に捌きやすいです。身の色は透明感がありつつも、やや濃い色合いが特徴的です。シマイサキの身に近い印象を受けます。また、皮は薄くてもしっかりしており、思い切って剥いても問題ありません。
刺身
まずは刺身でいただきたいと思います。身は半透明で、薄皮は銀色で、血合いは少なく、見栄えがとても良いです。食べた感触は柔らかすぎず硬すぎず、旨味がかなり強いです。捌く前の丸の状態では生臭さがありましたが、身には臭みは全くなく、非常に美味しいです。
炙り
次は、皮をそのままにして炙ってみます。このようにすると、スケールポケットがよく観察できますね。先程の刺身とは異なり、皮目が香ばしくて非常に美味しいです。皮は薄いため、歯切れがよく、食感も楽しめます。
脂瞼と吻端
最後には希少部位である脂瞼と吻端の刺身をいただきました。この刺身は半透明で透明感があり新鮮さがよくわかります。触感は想像通りコリコリしており、つぶ貝のようです。旨味はあまりありませんが触感がとても良いので、一度は食べてみる価値があると思います。
今回はツバメコノシロを刺身や炙りなどいくつかの調理法で紹介しましたが、他にも様々な調理法で楽しむことができます。ぜひ皆さんも自分なりの調理方法で、この美味しい魚を味わってみてはいかがでしょうか。