カツオノエボシからカツオ出汁がとれると聞いたので食べてみた

海が荒れた翌日、砂浜を歩いていると様々な漂着物を見ることができる。そのほとんどは木やゴミだが、時に面白いものが漂着していることがある。その一つが今回紹介するカツオノエボシだ。
一見、葵ビニール袋のようだがその正体は猛毒クラゲで、うっかり触手に触れてしまうと刺胞と呼ばれる器官から毒針が飛び出し、毒を注入されてしまう。刺された場所はひどく腫れあがり、焼けるような痛みに襲われるという。また二度目刺されるとアナフィラキシーショックと呼ばれるアレルギー反応によって最悪の場合死に到る可能性もあるそうだ。
そんなカツオノエボシだが、なんと食べれるという!
ソースはカツオノエボシ大発生に対するある方のツイート。
驚きである…味はするのか?何色になるんだ?そしてなんといっても毒。これは大丈夫なのか?様々な疑問が頭に浮かぶ。
このツイートは2011年にされた古いものなのだが、アカウントがまだ使用されていたので、ダメ元で質問をした所ご返答をいただいた。
以下、質問と回答である。
1. 地方名(奄美大島での呼び方)について
とのこと。
「イラ」について調べてみると、九州の方言でアンドンクラゲを指すようだが、残念ながら「チュンブルカイ」については何も出てこなかった。
2. 加熱後の変化について
溶けるようにバラバラになると思いきや、どうやらそうではないみたいだ。
軽くまとめると
・カツオノエボシは奄美大島でイラと呼ばれていて、カツオ出汁がとれる。
・加熱されたカツオノエボシは白くなり、コリコリした食感になり美味しい。
とのこと。
しかし、加熱後の変化についてはある程度は予測していたので納得できるが、正直カツオ出汁がとれるというのは信じがたい。
『クラゲ大図鑑』(平凡社)によるとカツオノエボシという名の由来は「カツオがいるような海域に多く、形が烏帽子に似ていること」だそうだ。他の本でも大体同じようなことが書かれており、いずれも「カツオ出汁」という単語はどこにも記されていない。
つまり、少なくとも名前の由来は「カツオ出汁がとれるから」ではない。名前の由来とは関係なしに、たまたまカツオ出汁がとれたというのも出来すぎている。
とはいえ実際に食べてみなければその味はわからない。ひょっとすると本当にカツオ出汁がとれるかもしれない。丁度カツオノエボシが家にあったので早速試してみる。
早速カツオノエボシを鍋に入れ、ここら鍋の水を沸騰させグツグツと煮込んでゆく。
今更だがカツオノエボシはやり美しい。毒があると知っていても触ってしまいそうになる。。。
数分後
風船部分がパンっと破裂すると思いきやそうではなく、数分の加熱でカツオノエボシの風船部分は静かに極小化。ちょっと期待はずれだったが、破裂したらしたで大変なので、これでよかったのかもしれない。
この時、色はまだ青いままで脱色していないが、若干透明感が失われように見える。お湯の色に変化は見られない。
さらに加熱する話通り白く脱色したが、やはりお湯の色に変化は見られなければ、匂いもしない。
あれ以上加熱しても変化が見られなかったので回収。
一番懸念していた毒はこの通り、触っても大丈夫なようだが、摂取した場合はどうなのかこの時点ではまだわからない。
また、この時茹で汁を飲んでみたがお湯の味しかしなかった。この時点で「カツオノエボシからカツオ出汁がとれる」という話は信憑性が低くなる。
※味がしないので汁にだしの素入れました
であればあとはカツオノエボシ本体の味に賭けるしかない。よく見ると水餃子のようになっていて美味しそうである。これはもしかすると何かしらの味がするかもしれない。
しかし、恐る恐る口に入れたカツオノエボシはコリコリしているだけの物体で、味は旨味もない無味であった。
今回カツオノエボシからカツオ出汁をとることはできなかった。ひょっとすると1匹だけでは足りなかったのかもしれないし、それ以外にも何か理由があるかもしれない。
と言ったものの「カツオノエボシからカツオ出汁はでない」というのが実際調理して率直に思ったことだ。またシーズンインしたら調理したいと思う。
※カツオノエボシには毒があります。捕獲、調理の際は十分に注意を払い、自己責任でお願いします。