ゴンズイを食べる
ゴンズイって実は美味しいんです!なんて令和の時代にわざわざ言うまでもないし、そんなこと魚食マニアの中では常識となりつつある。とはいえ、私の周りでもまだ食べたことがないという人も少なく布教活動が進んでいないのも事実だ。末端のサイトではあるが布教活動もかねて軽く綴ろうと思う。この記事がわずかにでもゴンズイ食の一助となれば幸いである。
ゴンズイとは
ゴンズイはナマズ目ゴンズイ科に属する魚で日本の浅海に広く分布。ナマズ目の多くは淡水域に生息するが本種は汽水~海水域の浅海に生息する。幼魚ではゴンズイ玉と呼ばれる大規模な群れを作るが、成魚になるにつれて単独行動するようだ。6月頃の産卵期になると砂地に穴を掘り産卵の準備をする姿を観察することができる。
台湾で釣ったゴンズイ属、恐らくミナミゴンズイ
fishbaseによると世界には40種近くのゴンズイ科魚類がいるとされているが、日本のゴンズイ科は本種のほかにミナミゴンズイのみが知られる。この2種は形態が酷似しているため、外見からの識別は困難である。鰓耙数を数えることによって同定することが可能だが、鰓蓋をめくる必要があるので、生体や写真からの識別はほぼ不可能だろう。ゴンズイというとストライプ柄が特徴的な魚だが、海外産のゴンズイ科には無柄のものが多く、むしろ日本のゴンズイが特殊な感じだ。
また、ゴンズイは有毒魚としても知られている。本種の背鰭と左右の胸鰭に強大な棘を1本ずつ持ち、この棘は近くで見るとかえしのような構造がある。ナマズ目の魚たちはゴンズイのように胸鰭と背鰭に棘を持つ種も少なくない。
ゴンズイは自分で釣るのが手っ取り早い
悲しいことにゴンズイを食べたいと思っても魚屋で売られていることはほぼない。それ故にゴンズイを食べるには自分で捕獲するしかないのだ。正確に言えば市場に流通することはあるのだが、数もまとまらず入荷は少ないので自分で捕獲するのが手っ取り早い。
愛知県の一色でセリにかけられるゴンズイ
合法かつ最もお手軽なのが釣りだ。一応、たも網で捕まえることも可能だが、食用に向く大きな個体はなかなか難しく効率が悪い。昼夜問わず釣ることができるが、夜間のほうが活性が高いので可能な限り夜釣りがよいだろう。餌はイソメでもオキアミでも何でも構わない。いればすぐ釣れるはずだ。
昼でも目の前に餌を落とせば釣れる
ゴンズイを捌く
キッチンバサミで切断。この時棘が飛んでいくことがあるので注意かも。
ゴンズイを捌く前に毒棘のある背鰭と1対の胸鰭をキッチンバサミ等で切り落すことをお勧めする。たんぱく毒なので加熱すれば変性、不活性化するが、加熱前であれば死後でも毒は健在なので安全のため切除すべきだろう。
黄色いヌルヌル。刺激が強いので生では舐めない方が良い。
ゴンズイ料理では毒棘に気を取られがちだが、ヌメリをしっかり落とすのも重要だ。この体表の黄色いぬめり、生で舐めれば分かるがめちゃくちゃ刺激的である。こういったものは後々、悪さをすることが多いので包丁しっかりと落とす。なお、ぬめりを落とすのは捌き易くなるというメリットもある
綺麗な身の色
今回、ゴンズイで蒲焼を作るので背開きにしていく。もちろん腹開きでも大丈夫だ。自分の場合は頭を落としてから出刃包丁で背開きにしている。鮮度が良ければこのまま刺身にして食っても非常にうまい。
ゴンズイの食べ方
食べ方と言ってもゴンズイも所詮はただの魚なので、通常の魚と同じように美味しく食べることができる。
蒲焼
真ん中のはゴンズイの幼魚。骨ごと食べることができる。
まず、大本命の蒲焼だ。ゴンズイの骨から取った出汁と醤油、砂糖、みりん、酒を調合したシンプルなタレを塗り七輪で焼いた一品。大きい個体は捌いたが、ごく小さな個体はタレを付けてそのまま焼き上げる。焼いている最中、皮下から脂がふつふつを湧き出てきて非常にうまそうな感だ。実際、口にしてみると旨味が強く脂がのっていて美味である。蒲焼といえばウナギであるが、ゴンズイもなかなかにうまいことが分かった。
なめろう
ゴンズイの肉、肝、を混ぜた
次は新鮮なゴンズイの刺身と肝臓とネギを混ぜて叩いたもの。ゴンズイは鮮度の落ちが早いので生食は当日がベストだ。たたきにしてしまったのでわかりずらいが、ゴンズイの身は非常に綺麗であり見た目もかなり良い。もちろん味も良く旨味が強い部類に入る。
味噌汁
王道のゴンズイ料理
ゴンズイと言えば汁物という人もいるだろう。これは卵と肝臓を頭部、肉を味噌で炊いたもの。良い出汁がでて旨いのだが、個人的には上記の二品と比較するとゴンズイ感があまり楽しめないのであまりやらない。ちなみにぬめりをちゃんと落とさずにこれ作ると美味しくないので大注意。
魚卵
金色に輝くゴンズイの卵。
ゴンズイの卵巣を湯でほぐした後に醤油漬けにした。これが濃厚な味わいで結構うまいのだ。見た目も美しく素晴らしい食材。
久しぶりにゴンズイを食べたが、案の定おいしかった。今までゴンズイが釣れてしまってもリリースしていたという方はぜひ持ち帰って食べてみてはいいかがだろうか。もちろん毒には細心の注意を払う必要がある。