浜で拾ったセンハダカを食べる

 
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年明け前の12/30の未明、僕とM氏は地元の砂浜を歩いていた。お目当てはもちろんこの時期に打ち上がる深海魚たちである。この日は運が良いことに、過去最多であろうのセンハダカが打ち上がっていた。年が明ける前にとんだ幸運を呼び寄せてしまったのかもしれない。ライトで浜を照らすとギラギラと反射する物体がある。大抵こういうのは魚かビニールの裏側である。

 

 

M氏はこの反射を見つけるプロであり、僅かな反射も逃さない。過去には20mm程度のハダカイワシ科の魚も肉眼で発見している。センハダカは一箇所にたくさんというよりかは浜辺に散在しており、センハダカを拾って数歩歩けばまたセンハダカがあると言った感じであった。

 

 


1匹だけまだ生きてた。

 

 

その一方で、他の生物は皆無と言っていい程であり、比較的よく打ち上るヒロハダカですら1匹も見られなかった。唯一、見つかったのがキュウリエソ2個体のみである。M氏はセンハダカを幾度となく見てきているので、採集した大分部を僕に分けてくれた。僕も過去、センハダカは数個体標本にしているが、ここまで状態の良い標本は珍しいため、一個体は標本とさせていただき、残りの個体は色々料理して食ってみることにした。

 

 

 

 

センハダカたくさん


ここまで綺麗なのは珍しい。剝がれやすい鱗もほとんど残っている。

 

 

40分程度の採集を終えて帰宅。数を数えてみると35匹もいた。我々、無我夢中で気づかなかったけどかなりの量を拾っていたみたい。M氏が少量持ち帰った分も合わせると40匹は超えているだろう。

 

 

さらに、驚くべきことに全ての個体において胸部にカイアシ類が寄生していた。ハダカイワシ科の魚はこの類の寄生虫がよく付いているのだが、宿主によってカイアシ類の種も異なるのか、若干色彩や大きさが異なる。また、寄生する位置も異なりここで見てきたセンハダカはいずれも胸部に寄生されるのに対して、ヒロハダカは体側部に寄生されている。

 

 

センハダカとは

センハダカはハダカイワシ科ハダカイワシ属に属する小型種で、沿岸に出現するハダカイワシ科の中ではよく見られる。他のハダカイワシ属と比較すると全体的に黒っぽいのが特徴で、生鮮時は青みかがる。この色彩に加えてVnがよく発達することから本種はハダカイワシ科の中では同定がしやすい種でもある。また、本種は日周鉛直移動をすることが知られており、昼夜は深海に住むが夜間になると浅海へ浮上し、時には今回のようにごく浅い場所にも出現する。

 

 


鮮度の良いセンハダカ。光の当て方によって眼が青い色に見える。

 

 

センハダカは様々な漁で漁獲され、今まで定置網、底引網、サクラエビ漁での採集を確認している。また、今回は打ち上がった個体であったが、過去には港内を活発に泳ぐ姿も確認している。

 

 


底引き網で漁獲されたセンハダカ。これはこれでかっこいい。

 

 

余談の余談だが、サクラエビの街で知られる静岡県の由比ではサクラエビ漁で大量に混獲されるセンハダカを食用としている。飲食店でかき揚げで提供されているらしく、見るからにうまそうなのが特徴だ。

 

 

 

 

センハダカの食べ方

このような小魚油で揚げてしまえば良いのだけど、砂浜で拾ったセンハダカは少々面倒なのである。というのも大きく開く鰓腔と口腔に大量の砂が入っていることがあり、よく洗わずに食べてしまうとかなりジャリジャリする。したがって、洗浄または頭部を切り落とす等の下処理が必要なのだ。

 

 

刺身


発光器も食べられる

 

 

打ち上がり個体とはいえ、数時間前に拾ったばかりだし、眼と鰓、体の張りを見る限りかなりの良鮮度。これを刺身で食べない選択肢はない。早速、鱗をとるが強めの流水で最も簡単に剥がれてしまう。これがハダカイワシと言われる所以だ。ハダカイワシ科の中には強い櫛鱗を持つ者もいるが少数派であり、ほとんどの種でこのように鱗が剥がれてしまう。

 

 

鱗をとってしまえば、あとは好きに食べることが可能だ。皮なんて剥く必要ないし発光器だってそのままいただける。刺身を数枚かき集めて醤油をつけていただく。身は柔らかく、ハダカイワシ特有の旨みも感じられる。わずかではあるが脂も感じられ、非常に旨い。

 

 

塩焼き


銀色の魚はキュウリエソ

 

 

続いては塩焼きにして食べる。そのまま焼くとフライパンにくっついてしまうので軽く油を引いて焼いていく。ちなみに下処理が面倒なので頭をつけたまま焼いてしまった。骨が柔らかいので中骨も頭部も丸ごと食べることができる。

 

 

 

 

しかし、案の定処理の甘さが仇をなし、砂がジャリジャリ。これも捉え方によっては良いアクセントなのかもしれないがはやり次はちゃんと下処理をしようと決意した。味に関しては流石センハダカと言うべきかかなり美味しい。大きさが小さいのが残念であるが、まとめて食べればそれなりに食べ応えがある。

 

 

唐揚げ


結局これが一番旨い

 

 

塩焼きでの反省を生かして下処理したのを唐揚げにした。カリカリに揚げたセンハダカは小さいながら香ばしく食欲をそそる。味に関してもちゃんとセンハダカの味がするし身は柔らか、もちろん骨も気にならない。かき揚げで提供されてるだけあって揚げ物が合うのかもしれない。

 

 


センハダカは小さいながら美味しかった。今のところハダカイワシ科の魚は数種食べてきているが今のところははずれなし。そして、最近打ち上ってる魚を食べることに抵抗がなくなってきた気がする。

 

 

 



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