ツバメコノシロがめっちゃ美味しい

2024/03/29
 
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ツバメコノシロという魚をご存知だろうか?見た目は地味でマイナーな存在だが、実はこの魚は非常に美味しいのだ。日本だとあまり知られていない魚だが、東南アジアでは重要な食用魚として親しまれている。

 

 

ツバメコノシロとは

 

 

 

ツバメコノシロは水深122メートル以浅の沿岸の砂泥底や河口に生息する魚。日本ではツバメコノシロ、ミナミコノシロ、カタグロアゴナシ、ナンヨウアゴナシの4種が生息しており、おそらく本種はツバメコノシロ科の中でもよく見られる種だろう。顔つきや体色はボラに似ていたり、標準和名に「コノシロ」が付くものの、本種はそれら2種とは別グループのスズキ目に属する魚なので注意が必要だ。

 

 

恐らくミナミコノシロ、マレーシアの魚市場にて。

 

 

ツバメコノシロ科は南方で多く見られるグループでインド太平洋に広く分布、東南アジアでは重要な食用魚として利用されている。日本では広く知られていないが、福島県以南の太平洋や若狭湾以南の日本海に幅広く生息している。

 

 

ツバメコノシロの特徴

今回、シラス漁師の方から鮮度抜群のツバメコノシロをいただいた。ツバメコノシロはユニークな特徴をたくさん持つ魚だ。まず、じっくりと観察した後に美味しくいただくことにした。

 

 


遊離軟条の数や長さが重要なグループ

 

 

まず、ツバメコノシロのユニークな特徴といえば、胸鰭の遊離軟条だろう。この遊離軟条は濁った水に生息するツバメコノシロが視覚代わりに使うと考えられてる。同じく胸鰭に遊離軟条を複数持つ魚ではホウボウ科の魚たちが有名だが、ツバメコノシロの遊離軟条はホウボウのそれよりも細く、柔軟性に富んでいるのが特徴。ホウボウ科の胸鰭の遊離軟条は味蕾がありことや歩行や索餌を行うのに対して、ツバメコノシロ科の魚は遊離軟条を物体を感知するのに使うことが知られている。

 

 

 

 

ツバメコノシロ科の分類において、胸鰭の遊離軟条は欠かせない形質であり、本数や長さで種を同定することができる。日本産ツバメコノシロ科は胸鰭に4、5、6本の遊離軟条を持つ種が知られており、本種は遊離軟条が5本であることから日本産の他のツバメコノシロ科の魚と容易に区別することが可能だ。なお、日本産のツバメコノシロ科は胸鰭遊離軟条が短い種しかいないのに対し、外国種には胸鰭遊離軟条の長さが体長を越える種も存在する。特に胸鰭遊離軟条が長い種は視覚よりも触覚に頼っているとされている。胸鰭の遊離軟条は、ツバメコノシロ科の魚の中でも非常に重要な役割を果たしていることが分かる。

 

 

 

 

もう一つの特徴は、魚の目を覆う厚みのある透明な膜状の構造である発達した「脂瞼(しけん)」。このような形質を持つ魚は、他にもボラ科やアジ科の魚が知られていますが、未だ詳しい役割は不明と言われている。一説では眼を保護する役割があるとも言われているが、ツバメコノシロのように濁った水に生息する魚が獲得した形質なので納得がいく。

 

 

ツバメコノシロを食べる

ツバメコノシロは見た目から身が緩そうな印象を受けるが、いざ触ってみると結構しっかりとした筋肉を持っていることが分かる。漁獲から一日たつにもかかわらず、鮮度も非常に良好である。

 

 


新鮮なツバメコノシロは光沢が強い

 

 

鱗はやや小さく厚みがあるものの、比較的剥がれやすく指でも簡単に剥がせることが特徴。また、鰭にも鱗が存在するため注意深く取り除くことが必要である。包丁を使って削ぎ落とすこともできるが、指先で丁寧に剥がしても十分な仕上がりになる。

 

 


三枚におろした姿

 

 

三枚におろすとこんな感じになる。幸い、ツバメコノシロの骨格は複雑でなく体が幅広いため非常に捌きやすい部類に入る。身の色は透明感がありつつも、やや濃い色合いが印象的だ。最近捌いた魚だとシマイサキの身に近い印象を受ける。また、皮は薄くてもしっかりしており、思い切って剥いても問題ない。

 

 

 

 

刺身

 

 

 

鮮度が良いのでまず刺身でいただきたいと思う。身は半透明、薄皮は銀色。血合いは少なく見栄えがとても良い。食べた感触は柔らかすぎず硬すぎず、旨味がかなり強くて驚いた。捌く前の丸の状態では生臭さがあったものの、身に臭みは全くなく非常に美味しい魚である。

 

 

炙り

 


炙ることにより鱗の大きさが観察しやすくなる

 

 

次は皮をそのままにして炙ってみる。先程の刺身とは異なり皮目が香ばしくて非常に美味しい。皮は薄いため、歯切れがよく、食感も楽しめる。だが、正直言って普通の刺身の方が美味しい。

 

 

脂瞼と吻端

 


一匹から僅かしか取れない

 

 

最後は希少部位である脂瞼と吻端の刺身をいただく。脂瞼と吻端の透明感が強くこの個体がいかに新鮮かよく分かる。触感は想像通りコリコリしており、つぶ貝を彷彿とさせる。旨味はほとんどないものの触感が非常に良いので、一度は食べてみる価値があると思う。これを大量に集めて食べれば珍味として楽しめそうだ。

 

 

今回はツバメコノシロを刺身や炙りなどいくつかの調理法で紹介したが、他にも様々な調理法で楽しむことができるらしい。なかなか手に入る魚ではないが次はフライや煮付けで食べてみようと思う。

 

 

 



Comment

  1. 中川久嗣ナカガワヒサシ より:

    ナンヨウアゴナシを調べていましたら本欄が検索できましたので興味深く見させていただきました。今回調理は遊離軟条5本ですが、ナンヨウアゴナシは6本とのことで同族異種のようです。教えて頂きたいことがありまして、フィーレに捌いた際に、ピンボーンと呼ばれる骨がこの魚にも在るのでしょうか。刺身にする際はピンセットかなにかで抜く必要があるものでしょうか。よろしくお願いします。

    • oomatsuna より:

      コメントありがとうございます。
      ツバメコノシロにも小骨があったと思いますが、この大きさの魚だと小骨あってもあまり気にならないですね。

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