ギンメダイはキンメダイに匹敵する旨さ

深海にはキンメダイならぬギンメダイがいることをご存じだろうか。「キンメダイは知っているけど...」という方がほとんどではないだろうか。
シンプルな名前ながら意外と知らない人が多い、そんな知名度の低いギンメダイを魅力を紹介したい。
一文字違うだけで結構違う
キンメダイとギンメダイは文字だけ見れば一文字しか違わないが、見た目や分類は大きく異なる。
【キンメダイ】言わずと知れた高級魚。冬が旬の深海魚で、赤い色と大きな目はすっかりお馴染みである。
【ギンメダイ】形はキンメダイに似ているが、よく観察するとキンメダイとは違った特徴を多く持つ。
1枚目がキンメダイで2枚目がギンメダイだ。これら写真を見ても分かる通りキンメダイの体が赤色なのに対して、ギンメダイの体は銀色であることから2種とも容易に区別することができる。体色以外にもギンメダイの下顎の下面には1対の髭があることや、背鰭が体の後半部にまで及ぶことから色だけではなく形態も明らかに違うことが分かる。
また、キンメダイは40cm以上に成長するのに対して、普通のギンメダイは大きくても30cm程にしかならない小型種であり、特に出回っているギンメダイは小型のものが多い(たまに大きいのもいる)。
分類を見てもキンメダイとギンメダイは大きく異なる。キンメダイはキンメダイ目・キンメダイ科に属するのに対してギンメダイはギンメダイ目・ギンメダイ科に属する。つまり、目レベルで違うのだ。
また、ギンメダイ科の魚は2021年5月現在、日本では本種を含めオカムラギンメ、アラメギンメ、キララギンメの4種が確認されている。
売られている場所
ギンメダイはキンメダイと同じく深海に生息する魚で、主に深海釣りの外道や深海底引き網で漁獲される。そのため、静岡県や愛知県などの深海底引き網が盛んな地域ではしばしば売られていることがある。鮮魚での値段は同じ大きさのキンメダイとは比べものにならないほど安く、キンメダイ一匹買えるお金でギンメダイが10匹以上買えるくらいだ。
鮮度落ちの早さや知名度の低さからか、反対に深海底引き網をやっていない地域や都内ではなかなかお目にかかることができない。しかし、近年地方の魚が手軽に手に入るようになったので、ネットを駆使して手に入れることも難しくはない魚だ。
しかし超旨い!
知名度が低かったり、値段が安かったりするのを聞くと「美味しくないのか」と思ってしまうが、それは大きな間違いだ。
結論から言うとギンメダイは超旨い。
キンメダイのような旨味こそないが脂のノリが非常によく、イマドキの舌を唸らせるのには十分なパワーを秘めている。私が言うのもおかしいが、そもそもキンメダイとギンメダイを比べること自体が間違っているのだ。なぜなら、前述した通りキンメダイとギンメダイは名前が似ているだけで全くの別物だからだ。
料理
ここからは私が今まで食べてきたギンメダイ料理を紹介したい。どれもハズレはないので試しやすいものから是非試してみてはいかがだろうか。
刺身
ギンメダイは身の水っぽさや緩さから生食には向かないと思われがちだが、刺身はかなりの絶品である。身に旨味はほとんどないが皮下の脂がしっとりと甘く、とても美味である。
焼霜造り
ギンメダイの皮をバーナーで炙るとじゅわじゅわと脂が湧き出てくるくらい、ギンメダイの皮下には脂が乗っている。そして、その脂を一番楽しめるのがこの料理法だ。
皮を炙ることによって風味や旨味に乏しいギンメダイにコクと香りが加わり完全体となる。ギンメダイ料理の中で3本の指に入る調理法だが、やや脂がくどく感じられ舌が飽きやすいのが難点である。
酢〆
ギンメダイの少ない旨味を生のまま引き出せるのがこの料理だ。他の料理と比べ時間と手間がかかるが、さっぱりした味付けと皮下の脂の甘さの相性は抜群である。
塩焼き
加熱しても美味しいのがギンメダイのいいところの一つである。身が少し水っぽいため、焼くと少しジューシーな仕上がりになる。
煮付け
深海魚の定番料理煮付け。身が水っぽいからって濃い味付けにする必要はなく、普通に煮て美味しい。身はホロホロと柔らかく、煮汁と脂の相性がとても良い。
干物
こちらは沼津港の干物店で500円で購入したもの。ギンメダイの唯一の欠点である水っぽさを解消した干物は、ギンメダイとは思えぬ味と食感を堪能することができる。魚の味を楽しみたいのであればこの食べ方が1番かもしれない。
ギンメダイはマイナーではあるがとても美味しい魚だ。もし、売られていることろを見たら是非買って食べてもらいたい。